ビリー･シーン（MR.BIG）、マイク･ポートノイ（元ドリーム･シアター）、リッチー・コッツェン（元ポイズン、MR.BIG）というハードロックファン感涙のメンバーで結成されたザ・ワイナリー・ドッグスが7月18日、東京・赤坂BLITZで来日公演を行った。

　結成発表からサクサクと活動を開始し、今年5月にデビューアルバム『ザ・ワイナリー・ドッグス』をリリースし、往年のファンたちを唸らせた。特に日本で人気の高いメンバーとあって各個人の名前だけでもそこそこヒットさせてしまう彼らだけに来日公演が決定すると、東京の日本青年館はあっという間にソールドアウト、急きょ追加公演としてこの赤坂BLITZが選ばれた。

　16日の大阪でマイク・ポートノイが「バンドの初めてのショーを目撃するというのはそう多くあることではない」とコメントしたように、彼らのバンドとして初のライブとなり、追加公演となる今回が3回目となる。そんな大御所新人バンドのライブは年齢層を考慮してか（？）赤坂BLITZとしては前方のフロアがシーティングと珍しいスタイル。開演前には物販コーナーが大盛況でバンドのTシャツを着て開演を待ち受けるファンも多数。テイラー・ホーキンスやチープトリックなどのロック・ナンバーBGMが高揚感を高める中、開演時間を少し過ぎた19：07に3人がステージに登場。ビリー・シーンとマイク・ポートノイの雰囲気はこれまでと変わった様子はないが、リッチー・コッツェンはあのロングヘアーをバッサリ切ってさっぱり。白髪が目立って切ない気持ちにさせてくれながらも美しい顔立ちは健在。ダンディーさを増した彼はMCもなく軽くファンの声援に応えると、1曲目「エレヴェート」でスタート。

　デビューアルバムの1曲目でもあるこの曲で会場の熱気は一気にヒートアップ。バンドはどっしりと構えたパフォーマンスで雰囲気を確かめるような準備運動と言わんばかりだが、2曲目「ウィー・アー・ワン」を終えてマイクが「アリガトー！トーキョー！！！！」と叫んで「クリミナル」に突入すると3人の演奏も熱を帯びてくる。マイク・ポートノイは正確無比でパワフルなフィルインを繰り広げながら手を上げてグイグイ客を煽る。天性の人懐っこさを持つ彼のハードながらちょっぴりコミカルなプレイに笑顔がこぼれる。プレイ中にコーラスを終えてよけた背後のマイクスタンドが一回転して目の前に戻ってくる場面も彼ならではかもしれない。

　そして、60歳となった現在もスレンダーなスタイルが驚愕のビリー・シーンもマイク・ポートノイに負けじと爆音で低音を刻みながら前線に躍り出る。ベース界のスーパースターである彼だけにひとつひとつの超絶技巧プレイに歓声が巻き起こる。千手観音のように右手と左手を巧みに使い分け唯一無二の“ビリー・シーンの音”でバンドの根本を支える。

　デビュー・アルバムの内容と同じく、このバンドの主導権を握るのはリッチー・コッツェン。ギタリストとして超一流の腕前を持ち、縦横無尽のレガートは数々のフォロアーを生み出してきた。もうひとつの魅力であるソウルフルな歌声が音源同様楽曲を引っ張り上げ、オーディエンスを盛り上げる。そのテクニックを思う存分披露しながら、楽曲のエンディングでアドリブを盛り込みブルージーに決めてみせる様は現代のクリームを見ているようだった。

　大御所ながら新人バンドとあってリリースも一枚だけの為、この公演ではデビュー作の収録曲すべてを披露。しかし、中盤には「これが聴きたいんだろ？」という面持でMR.BIGの「シャイン」を披露するサービスも。メンバー個々のバックに見える影が大きい為、様々な楽曲のカバーが予想されたが、やはりこの曲を選んでくるのも大御所だからこそだろう。

　メンバーの卓越したテクニックに支えられたルーツよりのブルージーなハードロックは約100分ほどで終了。各メンバーのソロもたっぷりで、集まった大勢の観客も大満足の笑顔で会場を後にした。バンドはこれから世界中をツアーで回る予定だ。更にパワーアップして次の作品を期待したいが、17日の日本青年館公演ではDVD用に映像が収録されたとの情報もあり、そちらの続報も楽しみに待ちたい。

【ザ・ワイナリー・ドッグス ジャパンツアー2013】
2013年7月18日（木）赤坂BLITZ　セットリスト：
01.エレヴェート
02.ウィー・アー・ワン
03.クリミナル
04.ワン・モア・タイム
05.タイム・マシーン
06.ダメージド
07.シックス・フィート・ディーバー
08.ジ・アザー・サイド
09.ユー・セイヴド・ミー
10.ノット・ホープレス
11.スタンド
12.ユー・キャント・セイヴ・ミー
13.シャイン
14.アイム・ノー・エンジェル
15.ザ・ダイイング
16.リグレット
En-1.フールド・アラウンド・アンド・フェル・イン・ラヴ
En-2.デザイアー